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「大富豪、時々探偵。 ~放蕩夫にお仕置きを~」15
周囲の誰もが、いい気になって見栄を張った青年実業家の敗北を予感していた。注ぎ込んだとは言ってもせいぜい100万やそこいらだと、あの青年実業家は勘ぐっていたのだろう。100万や200万ならこの手の店に来る客は持っていても不思議ではないから、わからない話ではない。
それに、口や態度は最悪であっても、金払いのいい社長に悪態をついたあの雪乃っていう女も、もうこの店にはいられないだろう。
周囲のそれぞれの心配が店中にこもっていた。
「あ、それなら今、持ってます。」
青年実業家の思わぬ言葉に、周囲の沈黙がさらに高まった。沈黙を遮ったのは、仁科のひと言である。
「…え?」
「あ、だから、2000万だったら、今、持ってます。」
青年実業家は横に置いていた大きな革の鞄を、自分の前のテーブルに置いた。
「どなたかお確かめください。」
すると、半信半疑で春樹の部下の飯島が鞄の中を開けた。その瞬間、口を押さえて硬直していたが、気を取り直して現金をテーブルに出し始めた。
「しゃ、社長、2000万、あります。というか…全部で3000万、あります。」
仁科は背中に冷や汗が流れるのを感じた。雪乃は話の中心に自分がいることにまるで実感がないまま、茫然と立ち尽くしていた。周囲のギャラリーはわけがわからないまま、何やらすごい瞬間に立ち会っていることだけは理解していた。
「これで、雪乃さんはもう貴方のものではなくなりました。ていうか、雪乃さんは最初から誰のものでもないんですけどね。ところで、貴方さっき2000万円と言いましたが、今ここにある3000万円を貴方に差し上げます。」
「な、なにを…」
仁科はたじろいだ。
「これで、完全に雪乃さんから手を引きなさい。約束ですよ、第一、1000万円もオマケするんだから。それと、この店にも二度と来ないでください。もっとも、そんなことをわざわざ言われなくても、みっともなくて来れないでしょうけど。」
仁科は恥ずかしさで顔を紅くし、言葉もなかった。そこへ、青年実業家が追い打ちをかけた。今までの飄々とした言い方とは違う、きっぱりとした声で。
「なあ、おっさんよ、女を金でどうにかしようとか、もう考えるな、バーカ!第一、自分の金でなく、会社の金で豪勢に遊ぶ人間なんて、人間のクズだ。肝に銘じろ!」
仁科は今にも逃げ出しそうである。
「俺の知り合いがなー、いいオンナなんだけど、この間、すげえ良い事言ったんだ。“世の中で好きな人は、心がある人。嫌いな人は、心がない人。最悪なのは、お金があるけど心がない人。”どうしてだかわかるか?」
仁科は低く唸るだけで何も発言できない。
「お金があるけど心がない奴は、始末が悪いから、だってさ。お前のことだ、覚えとけよ。」
仁科がようやく言葉を口にした。その時の仁科にとって、最も素朴な質問だ。
「き、君…君は一体、何者なんだ?」
青年実業家は店の出口に向かいながら、面倒臭そうに答えた。
「俺かい?俺は、本物の、金持ちだよ。」
★ 「大富豪、時々探偵。 ~放蕩夫にお仕置きを~」16につづく ★
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それに、口や態度は最悪であっても、金払いのいい社長に悪態をついたあの雪乃っていう女も、もうこの店にはいられないだろう。
周囲のそれぞれの心配が店中にこもっていた。
「あ、それなら今、持ってます。」
青年実業家の思わぬ言葉に、周囲の沈黙がさらに高まった。沈黙を遮ったのは、仁科のひと言である。
「…え?」
「あ、だから、2000万だったら、今、持ってます。」
青年実業家は横に置いていた大きな革の鞄を、自分の前のテーブルに置いた。
「どなたかお確かめください。」
すると、半信半疑で春樹の部下の飯島が鞄の中を開けた。その瞬間、口を押さえて硬直していたが、気を取り直して現金をテーブルに出し始めた。
「しゃ、社長、2000万、あります。というか…全部で3000万、あります。」
仁科は背中に冷や汗が流れるのを感じた。雪乃は話の中心に自分がいることにまるで実感がないまま、茫然と立ち尽くしていた。周囲のギャラリーはわけがわからないまま、何やらすごい瞬間に立ち会っていることだけは理解していた。
「これで、雪乃さんはもう貴方のものではなくなりました。ていうか、雪乃さんは最初から誰のものでもないんですけどね。ところで、貴方さっき2000万円と言いましたが、今ここにある3000万円を貴方に差し上げます。」
「な、なにを…」
仁科はたじろいだ。
「これで、完全に雪乃さんから手を引きなさい。約束ですよ、第一、1000万円もオマケするんだから。それと、この店にも二度と来ないでください。もっとも、そんなことをわざわざ言われなくても、みっともなくて来れないでしょうけど。」
仁科は恥ずかしさで顔を紅くし、言葉もなかった。そこへ、青年実業家が追い打ちをかけた。今までの飄々とした言い方とは違う、きっぱりとした声で。
「なあ、おっさんよ、女を金でどうにかしようとか、もう考えるな、バーカ!第一、自分の金でなく、会社の金で豪勢に遊ぶ人間なんて、人間のクズだ。肝に銘じろ!」
仁科は今にも逃げ出しそうである。
「俺の知り合いがなー、いいオンナなんだけど、この間、すげえ良い事言ったんだ。“世の中で好きな人は、心がある人。嫌いな人は、心がない人。最悪なのは、お金があるけど心がない人。”どうしてだかわかるか?」
仁科は低く唸るだけで何も発言できない。
「お金があるけど心がない奴は、始末が悪いから、だってさ。お前のことだ、覚えとけよ。」
仁科がようやく言葉を口にした。その時の仁科にとって、最も素朴な質問だ。
「き、君…君は一体、何者なんだ?」
青年実業家は店の出口に向かいながら、面倒臭そうに答えた。
「俺かい?俺は、本物の、金持ちだよ。」
★ 「大富豪、時々探偵。 ~放蕩夫にお仕置きを~」16につづく ★
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